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CULTURE / MOVIE
鮮やかな過酷さ、そんな途方もない冒険
「神と共に 第一章:罪と罰」

あの「新感染 ファイナル・エクスプレス」を超えたというのだから大変なヒットである。「神と共に 第一章:罪と罰」と日本で題されることになった一作は、本国で1440万人を動員し、韓国歴代3位の座に輝いた。

映画そのもの以上に、韓国の観客のポテンシャルに驚かされる。本作の大衆性を示す上で、たとえば「ハリー・ポッター」的、というような表現はできなくもないが、その点はまったくこの映画の本質ではない。

なにしろ、これは地獄巡りの物語。命を賭けた救助活動中、文字通り命を落とした消防士が、あの世で3人の使者と共に、7つの裁判を受ける。49日間の中で、すべての裁判で無罪となれば、現世に生まれ変わることができる。実にゲーム的な設定だし、テンポも軽やかだが、いわゆるスタイリッシュなテイストの作品ではない。

地獄はよく火にたとえられるが、マグマを感じさせる映画だ。ビジュアルではなくドラマ重視。世界観より人間優先。CGは多彩に活用されているが、どこまでも人力。アナログ精神がデジタル技術を呑み込んで、威風堂々、悠然と闊歩していく。映画を見つめることはそもそも、こうした生命力に出逢うことであり、そんなエネルギーを浴びることだったのではないか。きわめて原初的な体験が、ここにはある。

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善人が試される。7つの関門すべてを突破する行程は、快感ではなく修行の忍耐が主眼となる。それは大会試合の晴れやかさではなく、鍛錬の場の地道さに他ならない。つまり、冥界においても人間場ゲームではなく、トレーニングを続けなくてはいけないというテーゼがここでは体現されている。

だが、暗くはない。悲壮感もない。鮮やかな過酷さ、と表現すればいいのだろうか。過酷さの中に光明を見いだす。そんな途方もない冒険が「神と共に 第一章:罪と罰」の新しさである。

このアプローチは同時に、俳優業の光と影も浮かび上がらせる。出演者たちはグリーンバックに囲まれて演じなければならなかったというが、合成前提の空虚な空間で繰り広げられたはずの彼らの芝居はひたすらカラフルであり、ヴィヴィッド。役者にとっては地獄そのものの状況だったろうが、それを突破する熱の集積こそが、マグマの主成分なのかもしれない。華やかであることを求められる演じ手だが、それを支えるは、いつの世もひたむきさでしかない。報われるかどうかもわからないまま、地獄巡りをつづけるキャストの姿が、映画の軸に確かにシンクロしている。

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Written by : 相田冬二


「神と共に 第一章:罪と罰」
監督:キム・ヨンファ
出演:ハ・ジョンウ/チュ・ジフン/キム・ヒャンギ/チャ・テヒョン/D.O./マ・ドンソク

公式サイト
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5月24日(金)新宿ピカデリーほか全国ロードショー
「第二章:因と縁」は6月28日(金)よりロードショー