2019年5月に「パラサイト 半地下の家族」がカンヌ国際映画祭パルムドール(最高賞)を受賞、世界各地で劇場公開されていく中、2020年2月に第92回アカデミー賞で作品賞、監督賞、脚本賞、国際映画賞の4冠に輝くという快挙を成し遂げ、ますます世界の韓国映画に対する視線は熱くなった。韓国映画が世界から注目される存在にいたるまでには、やはり国を挙げての支援、海外映画祭への進出、海外映画人との交流などをたゆまず続けてきた努力がある。オスカーの行方を決める投票権を持つアメリカ・映画芸術科学アカデミーの会員にイ・チャンドン監督をはじめ、チェ・ミンシク(俳優)、ホン・ギョンピョ(撮影監督)、リュ・ソンヒ(美術監督)など韓国映画人の40名以上が名を連ねていることもそういった努力の積み重ねの結果であるといえるだろう。桂園(ケウォン)芸術高校演劇映画科、東国大学映画映像学科を経て、ニューヨーク・コロンビア大学大学院映画科で学んだキム・ボラ監督から見た韓国映画の魅力とは?
「いろいろな海外の映画祭に参加しましたが、どの国に行っても、好きな韓国映画の話や、なぜ韓国映画がこんなに面白いのかと質問される方がたくさんいらっしゃいました。韓国映画が世界でとても愛されているんだと感じましたし、そのおかげで歓迎してもらえてありがたく思いました。国家主義というものに対しては常に警戒する気持ちもあったのですが、先輩映画人たちが作ってきたものがあったからこそ、今、私が映画を作ることができている部分もあると思いますし、ありがたく感謝しています。韓国映画の魅力……。私は韓国という国自体、とてもダイナミックな国だと思っています。自分の国を本当に愛する人であれば、自分の国を批判的な目で見ることも自然で当然なことだと思うんです。私も韓国が最高!だとは思いません。自分の国を愛しているからこそ、より冷静に判断して、よりよい部分を見つけようとしています。「はちどり」もやはり韓国社会を批判する部分がありますが、その批判は、情と愛と信頼がベースにあってこそのものなんです。韓国社会はわずか数十年の間に劇的に変化しました。驚くべきことに、ポジティブな変化とネガティブな変化が同時に起こるようなダイナミックな変化を遂げたわけです。そうなるとどうしても亀裂や衝突がたくさん起こってしまうじゃないですか。そんな状況下にあって、映画も少し独特な傾向を持つようになったのではないかと思います。すでにいろんなものが完成されている国ではなかったので、超高速で短期間にいろんなものを作らなければならなかったし、長所も短所も混在しています。そんなエネルギーのもとで振り幅の大きい喜怒哀楽も自然に発生したと思いますし、文化全般に影響を与えていると思います。ただ、韓国の人々がもう少し自分のやってきたことを褒めて、認めてあげて、あまり頑張りすぎないでほしいなとも思っています。アジアの人って皆、頑張るじゃないですか。もうちょっと余裕を持って生きてればいいのにと思いますね」