ホウ・シャオシェンのアシスタントを務めていたホアン・シーの初監督作品。ホウが製作総指揮・プロデュースを務め、ホウ作品やジャ・ジャンクー作品でおなじみのリン・チャンが音楽を手がけている。台北映画祭では脚本賞、助演男優賞、新人賞、撮影賞の4冠に輝き、金馬奨では新人監督賞、新人賞、オリジナル音楽賞にノミネートされた。
「ジョニー」なる男あての間違い電話を受けたひとりの若い女性。インコの世話を続ける彼女の日常を中心に、家造りを手伝う放浪の青年、やや発達障害気味の少年、3人それぞれの人生が重なり合う様を透明感あふれる映像でスケッチしていく。
車のエンストで始まり、エンストで終わる物語。出口のない時間の中にある、束の間の清涼感が見つめられる。都市の片隅に転がる「脱臼した青春」を愛情深く綴る筆致は、確かにホウ・シャオシェンの影響下にあり、夜の情景をみずみずしく捉えた撮影も印象的。
だが、なんと言っても終始ホットパンツ姿で動き回るヒロイン役のリマ・ジタンの颯爽とした魅力が光る。不満も、鬱屈も、彼女の肉体を通して表現されると、なぜかキラキラと輝き始める。躍動と清楚とがカジュアルな風情のまま共存しており、映画そのものをバウンスさせる原動力たりえているのだ。その意味で、これは優れたアイドル映画であり、フランソワ・トリュフォーの幾つかの映画がそうであるように「女性の脚」をめぐる映画でもある。
Written by:相田冬二
「ジョニーは行方不明」
監督:ホアン・シー(HUANG Xi)
第18回東京フィルメックス2017 コンペティション