── 「あなたを、想う。」は2008年の「一個好爸爸」以来の監督作ですね。
そんなに経っていた? とにかくやることがいっぱいあって忙しいから(笑)。でも、撮りたいものは常にたくさんありますよ。この作品については、蔭山(征彦)さんの短編の脚本には、言いたくてもなかなか口にできない想いが描かれていて、そこにアジア人ならではの美徳を感じました。特に妹の恋人であるボクサーとその父親の堤防でのやりとり、そして兄の想像のシーン。これらの場面に深い感銘を受けて、これを撮りたいと思ったんです。
── 緑島(りょくとう)の風景がとても美しく印象的ですが、この島を舞台にしたのはなぜですか?
緑島は台湾の東、とても近いところにありますが、台湾本土の人間にしてみれば忘れられがちな存在、ある意味近くて遠いところなのです。かつては私にとっても遠い存在でした。緑島の人たちも本土から来た人のことを「あなたたち台湾人は〜」などと、同じ台湾人ではないような言い方をします。だから、親子の場面を緑島で撮れば、彼らの関係をうまく説明することができるのではないかと考えたのです。
── 撮影監督にリョン・ミンカイさんを起用したのは、どういった経緯からですか?
誰かの紹介だったか、よく覚えていないんですが(笑)、とにかくこの映画では私は全く違う試みをしようと考えていました。以前も香港や台湾、中国のいろいろな人と仕事をしましたが、今回はよりオープンな場所で、様々な試みができたらいいと思いました。決まりきった映像とは違うもの、自分が予想できないような映像が欲しかったんです。例えば今回は照明をあまり使わず、自然光を多用しているんですが、そのように現場が私たちをリードしてくれるような、現場で生まれるものを生かすといった試みをしてみました。