Photo by : 丸谷嘉長
言わずと知れた名優ソン・ガンホ。スクリーンの中での輝きと、実物の存在感に、ここまでギャップのないひとも珍しいのではないか。
黙っていても画になる。ひとたび喋りはじめると、大らかで包容力のあるあの語りが出現。フランクな笑顔。ふてぶてしさと、茶目っ気が同居するニュアンス。どこからどう捉えても、わたしたちがよく知っているソン・ガンホに他ならない。
唯一の違いは、彼が映画の中で演じてきた人間たちに較べると、非常に知的で、センスにあふれているということ。余計な説明をせずに、端的にものを伝えるひとだ。そこも文句なしにかっこいい。
たとえば新作「パラサイト 半地下の家族」については、こんなふうに。
「見るべきは、ソン・ガンホを除く俳優陣のクレイジーな演技。ポン・ジュノ監督のクレイジーな演出。そして、クライマックスだね。一言で、この映画の内実を語るとすれば『そして人生は続く』ということだ」
ごく数秒で、結論に辿り着く鮮やかさに魅了される。これこそ、ホンモノの役者だ。
「ポン監督は驚くべき進化を遂げた」と、最もポン・ジュノについて語ることを許されているはずの男は堂々と口にする。その最新の独創性について問うと、こんな答えが返ってきた。
「韓国映画を図形であらわすとすれば、かつては正方形だった。だが、『パラサイト』は六面体なんだよ」
たしかに、「パラサイト」のすごさには、平面だったものが立体になったような驚きがある。