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ポン・ジュノ監督とのツー・ショット

「ただ、ポン監督の演出は変わらないね。20年間見守ってきたが、まったく変わらないよ。いつもユーモラスだ。『殺人の追憶』のときもそうだった。俳優たちが楽な気持ちで演じることができるように、端役のひとりひとりまでいい演技ができるように、雰囲気を作ってくれる。緊張させたり、硬直させたりはしない。本当にリラックスさせてくれるんだ。きっと、そういう人間なんだろう。だが、だからこそ、真に豊かな映画が作れるのだと思うよ」

映画は、ふたつの家族を対比させながら進み、「ある存在」の登場によって、思わぬ暴走をはじめ、ソン・ガンホ扮する主人公もその深層を解体され、解剖されることになる。

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「パラサイト 半地下の家族」

「わたしたちが生きていく中で、いちばん驚くのは、予想通り、予測通り、進んでいたその途中に、おかしなものが飛び出してきたときだろう。そのとき真実が赤裸々に見えてくる。知っていたのに知らないふりをして隠していたはずのものが、明るみになるんだ」

この表現通り、味わい深く、また新しい主人公像を、ソン・ガンホは涼しい顔で体現している。

「演じるときは、50対50の比率で考える。計画を立てたり、計算をしたりして演じるのが50パーセント。残りの50パーセントはもう意図的にでも空にして、まっさらな状態にしてスタートする。空けた50パーセントの部分がどうんなふうに満たされていくか。演じている自分自身、それが興味深いんだ。『パラサイト』は驚かされたね。こんなふうに満たされるのか!と」

おそらく彼の内部には、ふたつのコップがあるのだろう。ひとつは満たされていて、ひとつは満たされていない。その様子を愉しむことができる表現者。それがソン・ガンホに他ならない。

Written by:相田冬二


「パラサイト 半地下の家族」
監督:ポン・ジュノ
出演:ソン・ガンホ/イ・ソンギュン/チョ・ヨジョン/チェ・ウシク
ⓒ 2019 CJ ENM CORPORATION, BARUNSON E&A ALL RIGHTS RESERVED

TOHOシネマズ 日比谷ほかにて公開中


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