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CULTURE / MOVIE
映画という虫ピンで留めた「現代の標本」=「もうひとつの現実」
フィルメックス2017 中国・台湾・香港映画の現在②
「とんぼの眼」(中国 2017)

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中国を代表する現代美術家のひとり、シュー・ビンの意欲あふれる初監督作品。全編が、監視カメラもしくは定点観測による記録映像によって構成されている。それを模した撮り下ろし映像もあるが、明らかに作り物ではない記録も大量に含まれており、カットごとに画質が切り替わることも含め、観る者は「ドキュメンタリーにまるごと包まれたフィクション」を目撃することになる。

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つまり、偽物なのか、本物なのかという境界線を見失い続けることになるのだ。尼僧修行から離脱したひとりの女性を探す青年が、動画サイトで活躍するネットアイドルが彼女だと睨む。そんな筋書きはあるものの、監視する者、捜索する者もまたカメラによって見つめられていることを示唆する画面構成は皮肉が効いており、作者の視点は物語ではなく、世界の把握と風刺に向かっていることが見てとれる。

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圧巻なのは、天災や大事故を記録したカタストロフ映像を要所要所に挟み込むセンスであり、見ること=見られることのおぞましさが、きわめてクールに配置されている。これは、映画という虫ピンで留めた「現代の標本」だ。かつて偽漢字を4000文字も創作した「天書」という作品で、架空の国、民族、歴史を、誰にも読めない書物として提示したシュー・ビンは、現実からエキスを抜き取り、虚構化することで、「もうひとつの現実」を再構築している。画面の隅で淡々と明滅しているタイムコードも実に禍々しい。

Written by:相田冬二


「とんぼの眼」
監督:シュー・ビン(XU Bing)
第18回東京フィルメックス2017 コンペティション

http://filmex.net/2017/