MOVIE / COLUMN
「あなたを、想う。」
台北と、台東。美しい光の映像世界。内面深くあまりにも切ない、シルヴィア・チャン、作家の極致。

2018年秋、ホアン・シー監督作品、台湾映画「台北暮色」
2019年6月、チャン・リュル監督作品、韓国映画「慶州(キョンジュ)ヒョンとユニ」。
アジアの注目の作家の作品を配給してきたA PEOPLE CINEMA(エーピープル・シネマ)。その第3回配給作品となる「あなたを、想う。」の公開が決定した。エドワード・ヤン監督の処女作「海辺の一日」やジャ・ジャンク―監督「山河ノスタルジア」などに出演した女優のシルヴィア・チャンが監督。

両親の離婚で離れ離れになった兄妹と、妹の恋人。3人の心の揺れや親への想い。その切なすぎる物語を、台北と台東の、圧倒的に美しい、光と影の映像美の中に綴っていく。

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台東の沖にある、美しい島・緑島で生まれたユーナンとユーメイ兄妹。二人に毎日のように人魚の物語を話して聞かせる母は、息子と夫を置いて幼いユーメイだけを伴い台北へと去り、間もなく他界した。月日は流れ、駆け出しの画家となったユーメイは、家族を引き裂いた母への怒りを抱えて生きている。ユーメイにはボクサーの恋人ヨンシャンがいるが、試合が近づいて過敏になる彼に妊娠したことを告げられずにいた。網膜剥離であることを隠して試合に臨んだヨンシャンは、コーチに選手証を取り上げられ途方に暮れる。彼にとってボクシングは、亡き父と自分を繋ぐ唯一のものだった。一方、ユーナンは台東で旅行ガイドとして忙しく働きながらも、孤独の中で過去を思う日々を送っている。ある夜、台風で足止めされて立ち寄った店で、ユーナンは、あまりも切ない幻影に遭遇する……。

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3人の若者の過去と現在が複雑に交錯しながら繰り広げられる物語の脚本をシルビア・チャン監督と共に手がけたのは、台湾で活躍する日本人俳優・蔭山征彦。彼が温めていた3つの短編の脚本が監督の目に留まり、1本の作品へと結実した。2015年に台湾を皮切りに各地で公開され高い評価を受けて、香港電影評論學會大奨で最優秀脚本賞を獲得。ヒロインに香港女優イザベラ・リョンを起用、彼女の恋人役を「花蓮の夏」「GF*BF」の人気俳優チャン・シャオチュアン、兄役を40年近いキャリアを誇る実力派クー・ユールンが演じた。また、兄妹の母をかつて監督に見出されたリー・シンジエが務め、蔭山征彦も写真出演している。
母と子、兄と妹、男と女、それぞれの想いが、忘れえぬラストシーンへと収斂されていくーー。

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「あなたを、想う。」
監督・脚本:シルヴィア・チャン
脚本:蔭山征彦 撮影:リョン・ミンカイ
出演:イザベラ・リョン/チャン・シャオチュアン/クー・ユールン/リー・シンジエ
©Dream Creek Production Co. Ltd./ Red On Red

11月2日(土)~東京 ユーロスペース、神奈川 横浜シネマリン他、全国順次ロードショー


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