パク・ヘイルがタイトルロールを演じる人間ドラマ。
具体的には、1937年を背景に朝鮮総督府の書記官を演じているのだが、その書記官が当世流行の出で立ちをしている。よくいえばファッション的に先進的、悪くいえばカッコつけている裕福なチャラ男。女の子にワーキャー言われて酔っているスチャラカ役人である。でも、それは「なり」だけで、中身はプレイボーイから程遠い純情男という点がミソ。
その主人公イ・ヘミョン(パク・ヘイル)が友人の日本人検事・晋介(キム・ナムギル)とクラブに遊びに行って、女性歌手/ダンサーのチョ・ナンシル(キム・ヘス)に一目惚れする。彼女を追いかけ回すと、その正体は朝鮮独立運動家の一味だったというお話。
やや巻き毛ルックのパク・ヘイルは慌ただしい朝の身支度からまもなく、白スーツ&白ハットでキメて出てくる。表情もサッパリさわやか。それ以上に、歯が白い。まぶしい。
「僕が開発しているのはロマンにあふれる街」「女と電車がなくて生きられるか」などと、当初のヘミョンの言葉は軽薄極まりない。それが物語の深刻化とともに、どんどんパク・ヘイルのモダンぶりが稀薄になっていくあたりが見もの。戦争のきな臭い空気が前面にあふれ出し、顔つきも自ずとりりしくなる。導入部分の呑気な雰囲気からの落差は凄まじく、それが劇的に感じられる向きにはヘミョンの一途ぶりにも無理は感じないはず。
パク・ヘイル、この劇場公開時31歳。依然、坊ちゃん顔で、姉さん風女優とのロマンスが画的に似合ってしまっているのだが、20代前半頃の田舎のかわいい兄ちゃんという印象はかなり小さい。
文:賀来タクト
「モダンボーイ」(2008)
監督:チョン・ジウ
出演:パク・ヘイル/キム・ヘス/キム・ナムギル/キム・ジュンベ/キム・ヨンジェ
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