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パク・ヘイル × シン・ミナ
「慶州(キョンジュ)ヒョンとユニ」の軌跡 ⑧
パク・ヘイル「天命の城」

パク・ヘイルが李氏朝鮮の16代王・仁祖を演じる歴史ドラマ。

1636年12月14日、清が朝鮮に侵入。朝鮮王はたまらず南漢山城へ。そこから降伏までの47日に及ぶ籠城戦の顛末を描く「丙子の役」の物語。イ・ビョンホンが清軍との和睦を試みる吏曹(イジョ)大臣チェ・ミョンギル、キム・ユンソクがミョンギルと対立する徹底抗戦派の礼曹(イェジョ)大臣キム・サンホンをそれぞれ演じる。
 パク・ヘイルとしては「神弓 –KAMIYUMI-」に続く「丙子の役」作品で、「神弓」では野を駆ける弓の名手、すなわち在野の戦士役であったが、ここでは国のトップ役。ひとつの戦役を描く2作品で、両極の立場の人間を演じたわけである。
 仁祖はほぼ宮廷にいる設定。配下の大臣たちの意見を聞いては行く道を決めるという役どころで、ほぼ動きはない。さまざまな意見具申を聞いてはそれに返答するという場面が繰り返し続き、「神弓」のアクションを好む向きなどには平板に映るだろうか。しかし、それは同時に王の内なる葛藤を表情ひとつで見せるという抑えた芝居でもあり、ある意味、アクション表現より難しい局面が多々ある。やはり演技巧者たる評価をもって依頼された役どころだったのかと、パク・ヘイルのファンも溜飲が下がるところではないか。
 一方で、この作品の公開時、パク・ヘイルも40歳。王様を演じることに無理のない年齢でもあった。実際、仁祖も丙子の役の際は41歳。身の丈に合った役であった。
 生きながらえることを決断した仁祖はラスト、清の皇帝ホンタイジに対し頭を垂れ、地面に額をこすりつける。結果、50万人の朝鮮人が清に連行された。屈辱にまみれた表情。それがパク・ヘイルにとって、この映画のゴールだったように思える。

文:賀来タクト


「天命の城」(2017)
監督:ファン・ドンヒョク
出演:イ・ビョンホン/キム・ユンソク/パク・ヘイル/コ・ス/パク・ヒスン/チョ・ウジン

「慶州(キョンジュ)ヒョンとユニ」公式サイト


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