パク・ヘイルが弓の達人を演じるアクション史劇。
物語の時代背景は1636年。逆賊の息子の汚名を背負って生きてきた男ナミ(パク・ヘイル)は、亡き父の友人キム・ムソン(イ・ギョンヨン)に義理の息子としてかくまわれて生きてきた。ある日、妹ジャミン(ムン・チェウォン)がムソンの息子ソグン(キム・ムヨル)と婚姻関係を結ぶことになったが、婚礼当日、清軍が乱入。史実に有名な丙子の乱の勃発であった。無慈悲にもムソンを殺し、ジャインとソグンを連れ去った清の大軍に対し、ナミの武器は弓ひとつ。まさに命を賭した救出戦の幕開けであった。
アクションに次ぐアクションの息もつかせぬ展開。そんな作風に抗うことなく、口ひげをしっかり蓄えたパク・ヘイルは、彼の出演作史上、最も動的かつ男性的なりりしさを発揮している。疾風のごとく野を駆け、馬を駆り、弓を引く。シンプルにカッコイイ。
射的が正確なだけではない。必殺技もある。対象物が物陰にあっても射貫いてしまう「曲がる矢」。やじりが重く破壊力の大きいジュシンタ(リュ・スンリョン)率いる清の精鋭部隊の矢に対して、小ぶりなナミの弓が次々と危機を乗り越えていく様は痛快この上ない。
時に「殺しが目的の矢ではない」などの名台詞もこぼれるが、もちろん柔和な素顔は隠せない。ここにあるのは気取った武人のそれというより、パク・ヘイルならではの親近感に裏打ちされた独自のヒロイズム。折々に見せる肉親への思慕が殺戮描写を超えて温かい。
山場は敵の隊長との一騎打ち。一種の西部劇的スリルである。英雄譚らしい結末。
スリルといえば、ジュシンタの部下ノガミ役で大谷亮平が出演。この大谷に対しても、パク・ヘイルは自らの「曲がる赤い矢」で見事に射貫いている。
文:賀来タクト
「神弓 –KAMIYUMI-」(2011)
監督:キム・ハンミン
出演:パク・ヘイル/ムン・チェウォン/リュ・スンリョン/キム・ヨムル/大谷亮平
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