シン・ミナが聾唖の女性を演じた人間ドラマ。
それぞれ切ない結末を迎える4組の人間関係を描く物語で、シン・ミナ演じるスウンは遊園地で着ぐるみ(白雪姫)のバイトをしているという設定。園内で似顔描きをする青年イラストレーター、サンギュ(イ・ギウ)にひそかな恋心を抱いているのだが、実はスウン、過去に火事に遭い、顔に大きなやけど痕を残していた。では、引っ込み思案に終わる役かというとそうでもなく、どこか芯の強い部分を持っているところがとても魅力的だ。
サンギュに「男じゃないのか?」と言われると、着ぐるみの隙間から長い髪を見せ、足を見せ、ついにはブラジャーの紐を大胆に見せたりする。会話は手話だが、劇中では心の声として本人のモノローグが時折、挟まり、このときはイラストレーターに対して「子ども扱いしてんの?」とボヤく始末。一途な純情少女ながら、どこかやんちゃ。そのギャップがキュートに輝く。手話の手際もさることながら、かぶり物を身にまとって手足をキャラものっぽくコミカルに動かす仕草もなかなか。芸達者な印象を与えられる。
出口のない悲劇的な落着がひしめく中、シン・ミナ出演のエピソードは、同じく哀しい結末ながらも、どこかさわやかな後味を残している。それもこれも、シン・ミナのキャラクターが可憐にして瑞々しい気分を登場のたびに放っているからだろう。彼女の笑顔、彼女の溌剌に救われる観客はきっと多い。
文:賀来タクト
「Sad Movie〈サッド・ムービー〉」(2005)
監督:クォン・ジョングァン
出演:チョン・ウソン/チャ・テヒョン/イム・スジョン/ヨム・ジョンア/シン・ミナ
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