シン・ミナが記憶を失った幽霊を演じるファンタジー時代劇。
「人の世が欲望に満ち、あの世との境界が崩れ、死者が跳梁する朝鮮時代」という背景。幽霊が見える若者ウノ(イ・ジュンギ)が行方知れずの母親を捜すため、密陽へと向かう旅の途中、幽霊アラン(シン・ミナ)と遭遇するところから物語は始まる。
山中を駆けるアランは、男勝りで勝ち気な幽霊。死神どもを平気で殴る、いなすという暴れぶり。時に恐怖感がにじんでも、概ねアランの陽性の気分がそれを喜劇色に変える。
折々に霊界描写も挟むなど、凝った設定が巡らされた作品。それでいて、わかりやすい説明をろくにしないところが粋といえば粋。
シン・ミナ演じるアランは、ある日気づいたら死神の後ろを歩いていた。虚を突いて逃げ出したものの、自分が何者か思い出せない。彼女の謎を洗うため、ウノは地方官の「使徒(さと)」になる。それが題名の由来。
どう転がるのか読めない作品に歩調を合わせているのか、アランの表情もコロコロ動く。その顔を見ているだけで楽しい。
笑ったかと思えば、すぐむくれて、霊界の玉皇上帝に悪態をつく。あぐらもかく、足も投げ出す。見事にお転婆。けど、急に乙女心を見せたりもする。早々に判明する悲劇的な死の真相もなんのその。コメディリリーフとしてのアランの存在がただ可愛い。
シン・ミナは終始、溌剌とした印象。途中から切ないロマンス描写が多くなっていくものの、彼女のコメディエンヌとしての才を知るには打ってつけの作品。
文:賀来タクト
「アラン使徒伝(サトデン)」(TV/2012)
監督:キム・サンホ/チョン・デユン
出演:イ・ジュンギ/シン・ミナ/ヨン・ウジン/クォン・オジュン/ハン・ジョンス/ファン・ボラ
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