シン・ミナが25歳のパートタイマーを演じたサスペンスフルな人間ドラマ。
最後まで勝ち残れば10億ウォンが手に入るという謎のサバイバル・ゲームに参加し、想像もし得なかったゲームの惨状と秘密に遭遇する役どころ。
シン・ミナ演じるチョ・ユジンは、冒頭からいきなり救急車で運ばれるシーンで登場。生傷だらけの彼女が刑事らしき人物にゲームの実体を次々に回想していく。すなわちユジンは映画の狂言回しであり、ゲームに最後まで勝ち残った人間だということが最初にわかる仕掛け。この時点で、ゲームの結果は明らかであり、ゲームの過程以上にゲームそのものの秘密と謎解きが最大の見せ場であることを映画は謳っていることになる。
語り部という役柄も重なっているためか、ユジン自身もどこか虚無的で、ゲームへの参加に関して「目標もなく生きていた。皆が不幸になればいいと思っていた」などとこぼす。その厭世観が、ゲーム開催の理由を知らされるラストによく映えた。
ゲームの性格上、どうしてもアクション・シーンが多くなる。海、砂漠、川、森と、オーストラリアの自然を満喫するような撮影場面が連続。シン・ミナにとっては、これまでで最も運動量を必要とした作品ではなかったろうか。汗まみれの彼女も絵になる。美しい。
これが初共演となったパク・ヘイルとは最後まで映画の中心にいる。山場では足を負傷したユジンがハン・ギテ(パク・ヘイル)の肩を借りて脱出にいそしむなど、役の距離がフィジカル的に近い。後年の再共演作「慶州(キョンジュ)ヒョンとユニ」とは大きな落差である。
文:賀来タクト
「10億」(2009)
監督:チョ・ミノ
出演:パク・ヘイル/パク・ヒスン/シン・ミナ/イ・ミンギ/チョン・ユミ
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