「美しき日々」に続いてイ・ビョンホンと共演した作品。
今度は兄妹という間柄ではなく、一個の男と女としての顔合わせ。ただし、本格的なラブロマンスへと発展するわけではない。裏社会に通じるホテルマン(イ・ビョンホン)が組織からいわれのない「罪」をなすりつけられ、その落とし前をつけようとする物語。「復讐」を描く後半などは、男の意地を見せようとする極道アクション劇の匂いが強い。
シン・ミナは、イ・ビョンホン演じるソヌのボス、カン社長(キム・ヨンチョル)の愛人ヒス役。そのヒスに若い男ができたのではないかと疑ったカンがソヌに彼女の監視を命じたことでドラマは動き出す。
ヒスの家に向かったソヌが彼女と出会う場面が印象的だ。ソファに座っていると、足音が聞こえてくる。ソヌの目に映るのは、まずハイヒールを履き替えるヒスの足だけ。つぎに、ソヌがカン社長からの贈り物を示すと、観客に見えるのはヒスの後ろ姿。なかなかじっくり顔を見せない。ソヌの視線はヒスの耳に移り、つぎに手のアップ、そしてようやく顔。それも上目遣いの表情。シン・ミナの若さと美貌が強烈に印象づけられる。
これまで恋愛感情を持ったことがないという設定のソヌにとって、ヒスはあまりに無防備にまぶしかった。念入りな細部の描写は、ソヌ自身も理解に及んでいない一目惚れの「経緯」であり、同時にシン・ミナがこの時点で既にそれほどの存在感を放つミューズ的女優になっていたという証左でもある。
ヒスはチェロ奏者の顔も持つ。演奏場面がまた美しい。若い男もいる社長の愛人という尻軽とは裏腹の、品性に富んだ可憐さがたまらない。問題があるとするなら、イ・ビョンホンの独壇場的作品ゆえに、劇中、シン・ミナの出演場面があまりに少ないことだろう。
文:賀来タクト
「甘い人生」(2005)
監督:キム・ジウン
出演:イ・ビョンホン/キム・ヨンチョル/シン・ミナ/キム・レハ/ファン・ジョンミン
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